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farewell song



・・・



静か、ですね。



今日一日の喧騒が嘘みたいだ。



・・・これは、夜分遅くに失礼しました。
もう、お休みになられましたか?



それでは、眠りの常世においでになる前に
子守唄代わりに本日の子細を報告させていただきます
レディ・M。



おや・・・真実を知らされた今となっては
”ミス・メイスフィールド”
とお呼びしたほうがよろしいでしょうか?



なんて冗談ですよ、母上。
二人きりのこの場所で気取る必要などありませんよね。



本日お越しいただいたお客様方にはほぼお帰り頂きました。

皆様大変戸惑われておられましたが、
ウィンストン様をはじめとする方々のご尽力もあり事なきを得ました。

中でも母上の長年のご友人でもあり
裏社会の実力者でもあるマダム・ロワイエが

「ここにいるアシュリーはアドリアナの実の息子」

と、証言してくださってからは皆様十人十色
滑稽に顔色を変えておいででした。



それから先はといいますと―

やはり娼館通いを嗜む一流貴族の皆々様
大変後ろ暗いご様子ながらも背に腹はかえられぬようで

口止めのために阿る者

脅迫まがいに警告してくる者

誼を通じようとする者と様々でした。



勿論、その中には私の客もいましたよ?



それにしても母上の急病を誰一人疑わなかったのは
やはりあの主治医の言葉が大きかったのでしょうね。

予想通り

「原因はわからない。この館の設備では…」

などと、のたまっていましたよ。

さすがはフレイの傷一つ治せない無能者だ。



まったく

「毒が原因だ」

などと言われてはどうしたものかと
危惧していましたが・・・杞憂でしたね。



それから

あの薬は肌身離さず持っていようと思います。
母上が贈ってくれた
生涯でたった一度きりの贈り物ですから。



人を支配する、禁断の薬。

監禁したクライドに投与するために預けた
この世で三人だけが存在を知る
あってはならない薬。



そうそう、そのクライド・・・
母上の最愛の息子であるドーソン様ですが
ご友人であらせられるマダム・ロワイエが逃がしてしまいました。

偶然、その場に居合わせたのですが
少々目を離した隙に。
申し訳ございません。



幸い母上がお倒れになった事で館内は騒然としていましたし
逃亡するには充分な時間だったでしょう。



クク・・・ハハハッ・・・ハハハハハハハハ!!!!!



おっと・・・あまり大きな声を出しては
母上の眠りを妨げてしまいますね。

もはや眠ることしか出来ない
母上の唯一の世界を邪魔するのは
無粋というものだ。



それでは私も明日、人と会う約束がありますので失礼します。
なんでもウィンストン様は現在の地位に満足していらっしゃらないようで
私に相談したいことがあるそうですよ?



なぜ、私なのでしょうね?



それではおやすみなさい、母上。
また明日もお薬の時間に。
2014年11月22日(土) 22:11 by La tristesse de l'etoile [ Edit ]
cetegory : アシュリー・フィン・エヴァンス / comments(0) / - / -